令和3年-問26 行政法 国家賠償法
Lv2
問題 更新:2023-11-20 17:14:11
公立学校に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.公立高等専門学校の校長が、必修科目を履修しない学生を原級留置処分または退学処分にするに際しては、その判断は校長の合理的な教育的裁量に委ねられる。
イ.公立中学校の校庭が一般に開放され、校庭を利用していた住民が負傷したとしても、当該住民は本来の利用者とはいえないことから、その設置管理者が国家賠償法上の責任を負うことはない。
ウ.公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められることから、その処分性が肯定される。
エ.市が設置する中学校の教員が起こした体罰事故について、当該教員の給与を負担する県が賠償金を被害者に支払った場合、県は国家賠償法に基づき、賠償金の全額を市に求償することができる。
- ア・イ
- ア・エ
- イ・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
正解 2
解説
ア、エが妥当である
公立高等専門学校の校長が、必修科目を履修しない学生を原級留置処分または退学処分にするに際しては、その判断は校長の合理的な教育的裁量に委ねられる。 ア.妥当である
高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものである(最判平成8年3月8日)。
公立中学校の校庭が一般に開放され、校庭を利用していた住民が負傷したとしても、当該住民は本来の利用者とはいえないことから、その設置管理者が国家賠償法上の責任を負うことはない。 イ.妥当でない
設置管理者が国家賠償法上の責任を負う可能性がある。
一般市民に開放中の町立中学校校庭内のテニスコートで、幼児が審判台の下敷きになって死亡した件に関する判例では、幼児を含む一般市民の校庭内における安全につき、校庭内の設備等の設置管理者に全面的に責任があるとするのは当を得ないが、公の営造物の設置管理者は、本来の用法に従って安全であるべきことについて責任を負うのは当然としている(最判平成5年3月30日)。
公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められることから、その処分性が肯定される。 ウ.妥当でない
既存の公立小学校を廃止し、新たに公立小学校を設置すること等に関する条例に関する判例では、「本件条例は一般的規範にほかならず、上告人らは、被上告人東京都千代田区が社会生活上通学可能な範囲内に設置する小学校においてその子らに法定年限の普通教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するが、具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するとはいえない」としており(最判平成14年4月25日)、本件条例は抗告訴訟の対象となる処分にはあたらないとして、処分性が否定された。
市が設置する中学校の教員が起こした体罰事故について、当該教員の給与を負担する県が賠償金を被害者に支払った場合、県は国家賠償法に基づき、賠償金の全額を市に求償することができる。 エ.妥当である
国家賠償法3条1項では、国家賠償請求は公務員又は営造物に関し、選任、監督、管理者及び費用負担者のいずれもがその賠償責任を負うと定めており、また、国家賠償法3条2項では、被害者たる国民に賠償した場合、損害を賠償した者は内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有するとしている。
判例は、「法令上、損害を賠償するための費用をその事務を行うための経費として負担すべきものとされている者が、同項にいう内部関係でその損害を賠償する責任ある者にあたると解する」とし、公立中学校の教諭の体罰によって生徒が受けた損害を都道府県(教諭の給与負担者)が賠償した場合は、学校教育法及び地方財政法を根拠に当該中学校を設置する市町村(中学校の経費負担者)に対してその全額を求償することができるとした(最判平成21年10月23日)。