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令和2年-問34 民法 債権Ⅱ

Level4

問題 更新:2021-01-11 12:42:19

医療契約に基づく医師の患者に対する義務に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 過失の認定における医師の注意義務の基準は、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であるとされるが、この臨床医学の実践における医療水準は、医療機関の特性等によって異なるべきではなく、全国一律に絶対的な基準として考えられる。
  2. 医療水準は、過失の認定における医師の注意義務の基準となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。
  3. 医師は、治療法について選択の機会を患者に与える必要があるとはいえ、医療水準として未確立の療法については、その実施状況や当該患者の状況にかかわらず、説明義務を負うものではない。
  4. 医師は、医療水準にかなう検査および治療措置を自ら実施できない場合において、予後(今後の病状についての医学的な見通し)が一般に重篤で、予後の良否が早期治療に左右される何らかの重大で緊急性のある病気にかかっている可能性が高いことを認識できたときであっても、その病名を特定できない以上、患者を適切な医療機関に転送して適切な治療を受けさせるべき義務を負うものではない。
  5. 精神科医は、向精神薬を治療に用いる場合において、その使用する薬の副作用については、その薬の最新の添付文書を確認しなくても、当該医師の置かれた状況の下で情報を収集すれば足りる。
  解答&解説

正解 2

解説

本問は、医療過誤訴訟における、医師の過失に関する判例を題材として出題されている。
新聞やニュース等で、医療過誤訴訟の記事をしばしば目にすることはあると思うが、医師の過失認定等についての詳細な記事は多くはない。

医療過誤とは、医療事故の発生原因について、医療機関、医療従事者に過失があるものをいう。
一般的に、患者が病院へ行き、診療行為を受ける場合において、病院側には、注意義務が生じる。
この点につき判例は「いやしくも人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照し、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのは、やむを得ないところといわざるを得ない。」(最判昭和36年2月16日)としている。

病院側が、実験上必要とされる最善の注意義務を怠り、患者に対して損害を負わせてしまい、訴訟になった場合、裁判所は、どのような判断基準により「実験上必要とされる最善の注意義務」を判断するのであろうか。

その判断基準が、「医学水準論」という考えである。
最判昭和36年2月16日判決では、「実験上必要とされる最善の注意義務」としているだけであり、その具体的な基準は明確ではないが、その後、別の事件において、判例は、「右注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である」(昭和57年3月30日)とし、現在においても、その判断基準が維持されている。

1.妥当でない

医療水準論に関する問いである。

判例は、「ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等にあたることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右の事情を捨象して、すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない」(最判平成7年6月9日)としている。

臨床医学の実践における医療水準は、全国一律的に絶対的な基準として考えられているわけではない。

2.妥当である

医療水準論に関する問いである。

判例は、「人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであるが、具体的な個々の案件において、債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である。そして、この臨床医学の実践における医療水準は、全国一律に絶対的な基準として考えるべきものではなく、診療にあたった当該医師の専門分野、所属する診療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものであるが、医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない」(最判平成8年1月23日)としている。

3.妥当でない

医師の患者に対する説明義務に関する問いである。

判例は、「少なくとも、当該療法(術式)が少なからぬ医療機関において実施されており、相当数の実施例があり、これを実施した医師の間で積極的な評価もされているものについては、患者が当該療法(術式)の適応である可能性があり、かつ、患者が当該療法(術式)の自己への適応の有無、実施可能性について強い関心を有していることを医師が知った場合などにおいては、たとえ医師自身が当該療法(術式)について消極的な評価をしており、自らはそれを実施する意思を有していないときであっても、なお、患者に対して、医師の知っている範囲で、当該療法(術式)の内容、適応可能性やそれを受けた場合の利害得失、当該療法(術式)を実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務がある」(最判平成13年11月27日)としている。

よって、医療水準として未確立の療法については、説明義務を負うものではないとしているのは、妥当でない。

4.妥当でない

医師の患者転医義務について問うものである。

判例は、「被上告人は、上記の事実関係の下においては、 本件診療中、点滴を開始したものの、上告人のおう吐の症状が治まらず、上告人に軽度の意識障害等を疑わせる言動があり、これに不安を覚えた母親から診察を求められた時点で、直ちに上告人を診断した上で、上告人の上記一連の症状からうかがわれる急性脳症等を含む重大で緊急性のある病気に対しても適切に対処し得る、高度な医療機器による精密検査及び入院加療等が可能な医療機関へ上告人を転送し、適切な治療を受けさせるべき義務があった」(最判平成15年11月11日)としている。

したがって、医師が、病名を特定できないため、適切な治療を受けさせる義務を負うものではないとしているのは、妥当でない。

5.妥当でない

医療水準論における医師の義務についての問いである。

判例は、「精神科医は、向精神薬を治療に用いる場合において、その使用する向精神薬の副作用については、常にこれを念頭において治療にあたるべきであり、向精神薬の副作用についての医療上の知見については、その最新の添付文書を確認し、必要に応じて文献を参照するなど、当該医師の置かれた状況の下で可能な限りの最新情報を収集する義務があるというべきである」(最判平成14年11月8日)としている。

本肢は、最新の添付文章を確認しなくてもよいとしているため、妥当でない。

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