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令和元年-問30 民法 物権

Lv3

問題 更新:2024-01-04 16:11:17

A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣接し、甲土地の上にはC所有の丙建物が存在している。この場合における次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Bが、甲土地に乙土地からの排水のための地役権をA・B間で設定し登記していた場合において、CがAに無断で甲土地に丙建物を築造してその建物の一部が乙土地からの排水の円滑な流れを阻害するときは、Bは、Cに対して地役権に基づき丙建物全部の収去および甲土地の明渡しを求めることができる。

イ.A・B間で、乙土地の眺望を確保するため、甲土地にいかなる工作物も築造しないことを内容とする地役権を設定し登記していた場合において、Cが賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造したときは、Bは地役権に基づき建物の収去を求めることができる。

ウ.甲土地が乙土地を通らなければ公道に至ることができない、いわゆる袋地である場合において、Cが、Aとの地上権設定行為に基づいて甲土地に丙建物を建築し乙土地を通行しようとするときは、Cは、甲土地の所有者でないため、Bとの間で乙土地の通行利用のため賃貸借契約を結ぶ必要がある。

エ.Aは、自己の債務の担保として甲土地に抵当権を設定したが、それ以前に賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造していたCからAが当該抵当権の設定後に丙建物を買い受けた場合において、抵当権が実行されたときは、丙建物のために、地上権が甲土地の上に当然に発生する。

オ.Cが、地上権設定行為に基づいて甲土地上に丙建物を築造していたところ、期間の満了により地上権が消滅した場合において、Aが時価で丙建物を買い取る旨を申し出たときは、Cは、正当な事由がない限りこれを拒むことができない。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・エ
  解答&解説

正解 4

解説

Bが、甲土地に乙土地からの排水のための地役権をA・B間で設定し登記していた場合において、CがAに無断で甲土地に丙建物を築造してその建物の一部が乙土地からの排水の円滑な流れを阻害するときは、Bは、Cに対して地役権に基づき丙建物全部の収去および甲土地の明渡しを求めることができる。 ア.妥当でない。

物権的請求権のうち、妨害の排除請求権及び妨害予防請求権は認められるが、返還請求権は認められないので、Bは、Cに対して地役権に基づき丙建物全部の収去および甲土地の明渡しを求めることができない。

地役権について条文は、「地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定している(民法280条本文)。
ただし、権利を有するとしても地役権者は承役地を排他的に占有するのではなく、承役地の所有者も地役権者の権利を妨げない範囲で使用できる。

A・B間で、乙土地の眺望を確保するため、甲土地にいかなる工作物も築造しないことを内容とする地役権を設定し登記していた場合において、Cが賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造したときは、Bは地役権に基づき建物の収去を求めることができる。 イ.妥当である。

地役権について条文は、「地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定している(民法280条本文)。

眺望を確保するために、承役地に地役権を契約によって設定することができる。
そして、地役権には、物権的請求権のうち、妨害の排除請求権及び妨害予防請求権は認められるので、Bは地役権に基づき建物の収去を求めることができる。

なお、地役権も不動産に関する物権につき、第三者に対抗するには登記が必要である(民法177条)。

甲土地が乙土地を通らなければ公道に至ることができない、いわゆる袋地である場合において、Cが、Aとの地上権設定行為に基づいて甲土地に丙建物を建築し乙土地を通行しようとするときは、Cは、甲土地の所有者でないため、Bとの間で乙土地の通行利用のため賃貸借契約を結ぶ必要がある。 ウ.妥当でない。

公道に至るための他の土地の通行権、いわゆる囲繞地通行権について条文は、「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と規定している(民法210条)。

この「他の土地に囲まれて公道に通じない土地」を「袋地」、「その土地を囲んでいる他の土地」を「囲繞地」といい、囲繞地を通行する権利が「囲繞地通行権」である。
この権利は、「相隣関係の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する」と規定されていることから(民法267条)、Cは甲土地の所有者ではないが地上権設定を受けているので、賃貸借契約を締結することなく、乙土地を通行することができる。

Aは、自己の債務の担保として甲土地に抵当権を設定したが、それ以前に賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造していたCからAが当該抵当権の設定後に丙建物を買い受けた場合において、抵当権が実行されたときは、丙建物のために、地上権が甲土地の上に当然に発生する。 エ.妥当でない。

法定地上権について条文は、「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす」と規定している(民法388条)。

Aは所有権を有する甲土地に抵当権を設定後、Cから丙建物を買い受け所有権を取得したので、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属していないことから、抵当権が実行されても法定地上権の要件は満たさない。よって、丙建物のために、地上権が甲土地の上に当然に発生しない。

Cが、地上権設定行為に基づいて甲土地上に丙建物を築造していたところ、期間の満了により地上権が消滅した場合において、Aが時価で丙建物を買い取る旨を申し出たときは、Cは、正当な事由がない限りこれを拒むことができない。 オ.妥当である。

条文は、「土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない」と規定している(民法269条ただし書き)。

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