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令和元年-問28改題 民法 総則

Lv3

問題 更新:2023-01-28 13:18:32

代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.代理人が代理行為につき、相手方に対して詐欺を行った場合、本人がその事実を知らなかったときであっても、相手方はその代理行為を取り消すことができる。

イ.無権代理行為につき、相手方が本人に対し、相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告を行った場合において、本人が確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。

ウ.代理人が本人になりすまして、直接本人の名において権限外の行為を行った場合に、相手方においてその代理人が本人自身であると信じ、かつ、そのように信じたことにつき正当な理由がある場合でも、権限外の行為の表見代理の規定が類推される余地はない。

エ.代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合において、復代理人が代理行為の履行として相手方から目的物を受領したときは、同人はこれを代理人に対してではなく、本人に対して引き渡す義務を負う。

オ.無権代理行為につき、相手方はこれを取り消すことができるが、この取消しは本人が追認しない間に行わなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. ア・オ
  4. イ・ウ
  5. ウ・エ
  解答&解説

正解 5

解説

代理人が代理行為につき、相手方に対して詐欺を行った場合、本人がその事実を知らなかったときであっても、相手方はその代理行為を取り消すことができる。 ア.妥当である。

詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる(民法96条1項)。
代理人の詐欺による相手方の意思表示については、代理人の意思表示の問題ではないから101条1項は適用されず、また、相手方が代理人に対してした意思表示の効力が、意思表示を受けた者が悪意又は有過失があったことによって影響を受ける場合でもないから101条2項も適用されない。

したがって、この場合は代理人による詐欺を当事者による詐欺と考え、96条が適用されることとなる。

無権代理行為につき、相手方が本人に対し、相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告を行った場合において、本人が確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。 イ.妥当である。

無権代理の相手方の催告権について条文は、「無権代理において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす」と規定している(民法114条)。

代理人が本人になりすまして、直接本人の名において権限外の行為を行った場合に、相手方においてその代理人が本人自身であると信じ、かつ、そのように信じたことにつき正当な理由がある場合でも、権限外の行為の表見代理の規定が類推される余地はない。 ウ.妥当でない。

権限外の行為の表見代理について、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき本人が責任を負うとされているが(民法110条)、代理人が直接本人名義で権限外の行為をした場合について判例は、「代理人が本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、代理人の代理権を信じたものではないが、その信頼が取引上保護に値する点においては、代理人の代理権限を信頼した場合と異なるところはないから、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、民法110条の規定を類推適用して、本人がその責に任ずるものと解するのが相当である」としている(最判昭和44年12月19日)。

代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合において、復代理人が代理行為の履行として相手方から目的物を受領したときは、同人はこれを代理人に対してではなく、本人に対して引き渡す義務を負う。 エ.妥当でない。

復代理人の権限等について判例は、「本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結されたことにより、本人復代理人間に直接の権利義務が生じた場合であっても、復代理人の代理行為も代理人の代理行為と同一の効果を生じるところから、契約関係のない本人復代理人間にも直接の権利義務の関係を生じさせることが便宜であるとの趣旨に出たものであるにすぎず、この規定のゆえに、本人又は復代理人がそれぞれ代理人と締結した委任契約に基づいて有している権利義務に消長をきたすべき理由はないから、復代理人が委任事務を処理するにあたり金銭等を受領したときは、復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負う」としている(最判昭和51年4月9日)。

無権代理行為につき、相手方はこれを取り消すことができるが、この取消しは本人が追認しない間に行わなければならない。 オ.妥当である。

無権代理人の相手方の取消権について条文は、「代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる」と規定している(民法115条本文)。
また、無権代理の相手方の催告権とはことなり、契約当時、無権代理行為と知っていた相手方には認められない(民法115条ただし書き)。

なお、取消権が行使されると契約は確定的に無効となり、本人は追認することができなくなる。

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