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  3. 平成30年
  4. 問5

平成30年-問5 社会権

レベル3

問題 更新:2019-01-18 13:28:00

生存権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利のうち、「最低限度の生活」はある程度明確に確定できるが、「健康で文化的な生活」は抽象度の高い概念であり、その具体化に当たっては立法府・行政府の広い裁量が認められる。
  2. 行政府が、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等、憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を越えた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となり得る。
  3. 憲法25条2項は、社会的立法および社会的施設の創造拡充により個々の国民の生活権を充実すべき国の一般的責務を、同条1項は、国が個々の国民に対しそうした生活権を実現すべき具体的義務を負っていることを、それぞれ定めたものと解される。
  4. 現になされている生活保護の減額措置を行う場合には、生存権の自由権的側面の侵害が問題となるから、減額措置の妥当性や手続の適正さについて、裁判所は通常の自由権の制約と同様の厳格な審査を行うべきである。
  5. 生活保護の支給額が、「最低限度の生活」を下回ることが明らかであるような場合には、特別な救済措置として、裁判所に対する直接的な金銭の給付の請求が許容される余地があると解するべきである。
  解答&解説

正解 2

解説

1.妥当でない

憲法25条の規定は、国権の作用に対し、一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質のものである。しかも、右規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない(最大判昭和57年7月7日)。
したがって後半は妥当だが、前半でいう「『最低限度の生活』はある程度明確に確定できる」わけではない。

2.妥当である

何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない。ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない(最大判昭和42年5月24日)。

3.妥当でない

判例によると、「憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定しているが、この規定が、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであること、また、同条2項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定しているが、この規定が、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであること、そして、同条1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものであると解すべきこと」(最大判昭和57年7月7日)としている。

4.妥当でない

生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている者らが、原則として70歳以上の者を対象とする生活扶助の加算が段階的に減額されて廃止されたことに基づいて、生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定を受けたため、保護基準の改定は憲法25条1項、生活保護法3条、8条、9条、56条等に反する違憲、違法なものであるとして、保護変更決定の取消しを求める訴訟について判例は、「保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである」とし(最判平成24年2月28日)、裁判所は通常の自由権の制約と同様の厳格な審査を行うべきではないとされている。

5.妥当でない

判例は、「憲法25条1項の規定は全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではなく、具体的権利は憲法の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、初めて与えられる」としている(最大判昭和42年5月24日)。
したがって、生活保護の支給額が、「最低限度の生活」を下回ることが明らかであるような場合でも、裁判所に対する直接的な金銭の給付の請求が許容される余地はない。

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