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平成28年-問26 行政事件訴訟法

レベル3

問題 更新:2019-07-31 20:43:54

いわゆる朝日訴訟最高裁判所大法廷判決(最大判昭和42年5月24日民集21巻5号1043頁)の事案は、次のようなものであった。この判決の結論のうち、正しいものはどれか。

原告Xは、以前からA県にある国立B療養所に単身の肺結核患者として入所し、厚生大臣(当時)の設定した生活扶助基準で定められた最高金額である月600円の日用品費の生活扶助と現物による全部給付の給食付医療扶助とを受けていた。ところが、Xが実兄Cから扶養料として毎月1,500円の送金を受けるようになったために、所轄のA県のD市社会福祉事務所長は、月額600円の生活扶助を打ち切り、Cからの上記送金額から日用品費を控除した残額900円を医療費の一部としてXに負担させる旨の保護変更決定(以下「本件保護変更決定」という。)をした。これに対してXは、A県知事、ついで厚生大臣に対して不服の申立てを行ったが、いずれにおいても違法はないとして本件保護変更決定が是認されたので、上記600円の基準金額は生活保護法の規定する健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するにたりない違法なものであると主張して、取消訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起した。しかしその後、Xは本件訴訟係属中に死亡した。

(参照条文)
生活保護法第59条(当時)
被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができない。

  1. 保護受給権はX個人に与えられた一身専属の権利であり、他の者にこれを譲渡することはできず、相続の対象にもなりえないが、裁判所は、本件保護変更決定の前提となる生活扶助基準の適法性について判断する必要があるので、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
  2. 生活保護法の規定に基づきXが国から生活保護を受けるのは、これを保護受給権と称されることがあるとしても、その法的性格は国の社会政策の実施に伴う反射的利益というべきであり、Xの死亡後においてそれが相続の対象となることもないから、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了する。
  3. Xの生存中の扶助ですでに遅滞しているものの給付を求める権利は、医療扶助についてはもちろん、金銭給付を内容とする生活扶助も、もっぱらXの最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであるから、相続の対象となりえず、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了する。
  4. 本件保護変更決定によってXは医療費の一部自己負担をせざるをえなくなるが、本件保護変更決定が違法であるとすれば、かかる負担についてXは国に対して不当利得返還請求権を有することになるから、当該請求権は相続の対象となり、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
  5. 生活保護法の規定に基づき被保護者が国から生活保護を受けるのは法的権利であり、同法が、被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができないと規定するのは、被保護者の生存中についての定めであるから、Xの保護請求権は相続の対象となり、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
  解答&解説

正解 3

解説

朝日訴訟が題材になっているが、本訴訟については憲法25条(生存権)及び、行政事件訴訟法の取消訴訟の訴訟要件(協議の訴えの利益)で学習をしており、多くの受験生は本訴訟の結論は把握しているものと思われる。したがって、原告である朝日茂氏が死亡したことにより、本訴訟は終了していることが分かっていれば、肢2か肢3のどちらかが正解となる。

1.誤り

判例は、保護受給権は、「被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であって、他にこれを譲渡し得ないし、相続の対象ともなり得ないというべき」であり、「不当利得返還請求権は、保護受給権を前提としてはじめて成立するものであり、その保護受給権が右に述べたように一身専属の権利である以上、相続の対象となり得ないと解するのが相当である」としている。したがって、本件訴訟は相続人に承継されない。

2.誤り

判例は、「生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であって、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。」としている。したがって本肢は誤りである。

3.正しい

判例は、「被保護者の生存中の扶助ですでに遅滞にあるものの給付を求める権利についても、医療扶助の場合はもちろんのこと、金銭給付を内容とする生活扶助の場合でも、それは当該被保護者の最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであって、法の予定する目的以外に流用することを許さないものであるから、当該被保護者の死亡によって当然消滅し、相続の対象となり得ない、と解するのが相当である」としている。

4.誤り

判例は、「不当利得返還請求権は、保護受給権を前提としてはじめて成立するものであり、その保護受給権が右に述べたように一身専属の権利である以上、相続の対象となり得ないと解するのが相当である」としている。

5.誤り

判例は、保護受給権は「被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であって、他にこれを譲渡し得ないし、相続の対象ともなり得ないというべきである」としている。

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