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平成26年-問35 民法 親族

Lv3

問題 更新:2023-01-30 21:44:24

利益相反行為に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。

イ.親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

ウ.親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。

エ.親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。

オ.親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ
  解答&解説

正解 5

解説

条文は「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない」としている(民法826条1項)。
さらに条文は続けて「親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない」ともしている(民法826条2項)。
民法は子の利益を守るため、利益相反行為に該当するときは、特別代理人の選任を要求しているのである。

親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。 ア.妥当でない。

判例は「民法826条2項所定の利益相反行為とは、行為の客観的性質上数人の子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるものを指称するのであって、その行為の結果現実にその子らの間に利害の対立を生ずるか否かは問わないものと解すべきであるところ、遺産分割の協議は、その行為の客観的性質上相続人相互間に利害の対立を生ずるおそれのある行為と認められるから、利益相反行為に該当する」としている(最判昭和49年7月22日)。

親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。 イ.妥当でない。

判例は「親権者である母が、その子の継父(母の夫)が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたらない」としている(最判昭和35年7月15日)。

借入行為も抵当権設定行為も、母はその夫たる子の継父のためにしたものであって、親権者である母自身のためになされたものではないから、親権者たる母と子との間の利益相反行為にはならないのである。

親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。 ウ.妥当でない。

判例は「親権者と子の利益相反行為につき、親権者が法定代理人としてなした行為は民法113条所定の無権代理行為にあたる」としている(最判昭和46年4月20日)。
親権者が未成年者の子を代理してした利益相反行為は、無権代理と同様なのだから、子が成年に達した後は、その子は追認することができる。

考えてみると、利益相反行為だからといって常に未成年者に不利になるわけではなく、有利になることであれば追認を認めてもよいはずである。ゆえに利益相反行為の効果を無効としているのではなく、無権代理と同様に「効果不帰属」にしているのである。

親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。 エ.妥当である。

たとえば親権者が「子の教育費のために」金融機関から借り入れをし(つまり債務者は親権者)、子の不動産に抵当権設定をする(つまり子が物上保証人になる)場合は、利益相反なのだろうか。子のために親がお金を借りて、子の不動産に担保設定をするのだから、「実質的には」子の利益は害されていないようにも思える。

これについて判例は「親権者自身が金員を借受けるにあたり、当該債務につき子の所有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に当該借受金を子の養育費に充当する意図であったとしても、利益相反行為にあたる」とした(最判昭和37年10月2日)。
利益相反行為にあたるかどうかは、客観的・外形的に判断するのである。

親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。 オ.妥当である。

判例は「親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる」としている(最判昭和43年10月8日)。

債権者が抵当権の実行を選択するときは、本件不動産における子らの持分の競売代金が弁済に充当される限度において親権者の責任が軽減され、その意味で親権者が子らの不利益において利益を受けるからである。

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