ご注意ください
※このページは本年度試験に対応していない場合があります。
このページの最終更新は2019年11月12日です。最終更新以降の修正は行いません。詳しくはこちらをご覧ください。
平成24年-問31 民法 債権Ⅱ
問題 更新:2019-11-12 12:07:02
2020年改正によりすべての選択肢の出題が不適当につき没問とする。※解説内容は改正以前のものです。
Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結したが、甲土地には権利等に瑕疵があった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知りながらBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAは、その事実を知った時から1年以内に限り、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。
- 甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知らずにBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Bは、契約の時に甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAに対して、単に甲土地の所有権を移転できない旨を通知して、契約の解除をすることができる。
- 甲土地の一部の所有権がCに属していた場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Aは、甲土地の一部の所有権がCに属していたことについて善意であるか悪意であるかにかかわりなく、契約の時から1年以内に限り、Bに対して、その不足する部分の割合に応じて代金の減額請求をすることができる。
- 契約の時に一定の面積を表示し、この数量を基礎として代金額を定めてBがAに甲土地を売却した場合において、甲土地の面積が契約時に表示された面積よりも実際には少なく、表示された面積が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しているために実際の面積であればAがこれを買い受けなかったときは、その面積の不足について善意のAは、その事実を知った時から1年以内に限り、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。
- 甲土地についてCの抵当権が設定されていた場合において、Aがこれを知らずに買い受けたときに限り、Aは、Bに対して、契約を直ちに解除することができ、また、抵当権の行使により損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。
正解4
解説
1.妥当でない。
本肢のようなことを全部他人物売買といい、この場合、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う(民法560条)。
そして、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない(民法561条)。
また、これらの権利には、除斥期間はない。
したがって、善意のAは、行使期間の制限を受けずに、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる(悪意の場合は解除のみ)。
2.妥当でない。
売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる(民法562条1項)。
そして、この場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは、売主は、買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる(民法562条2項)。
したがって、Aは善意であるから、BはAに対して、損害を賠償して、契約を解除することができる。
本肢は、Aが悪意の場合の記述である。
3.妥当でない。
売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる(民法563条1項)。
そして、この規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ1年以内に行使しなければならない(民法564条)。
したがって、減額請求できる点は正しいが、「善意・悪意を問わず、契約の時から1年以内に」としている点が誤っている。
4.妥当である。
本肢のような売買を数量指示売買(下記参照)という。
数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときは、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる(民法565条、民法563条2項)。
代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない(民法563条3項)。
また、これらの規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から1年以内に行使しなければならない(民法564条)。
したがって、本肢は妥当である。
民法565条にいう『数量を指示して売買』とは、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称するものである(最判昭和43年8月20日)。 |
5.妥当でない。
売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる(民法567条1項)。
抵当権が設定されている土地について買主が「悪意」の場合も、抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときに解除でき、本肢のように「直ちに解除」できるわけではない。
また、買主は、善意・悪意を問わず、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。
本肢のように、善意の場合だけではない。