商法テキスト1
商法と民法の各規定の比較
商法 | 民法 | |
---|---|---|
代理の顕名 | 商法504条 | 民法99条、民法100条 |
原則として不要(非顕名主義) | 原則として必要(顕名主義) | |
委任の範囲 | 商法505条 | 民法644条 |
商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。 ※民法644条の趣旨を明確にした注意的規定 |
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。 | |
代理権の消滅 | 商法506条 | 民法111条、民法653条 |
本人の死亡によっては、消滅しない。 | 本人の死亡によって、消滅する。 | |
隔地者間の承諾の期間を定めない契約の申込み | 商法508条 | 民法525条 |
受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。 | 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。(民法では隔地者間という概念で限定していない) | |
契約の申込みを受けた者の諾否通知義務 | 商法509条 | 民法522条、民法527条 |
遅延なく諾否通知を発しなければならず、怠ったときは、その商人は、契約の申込みを承諾したものとみなす。 |
契約は、契約内容を示して締結の意思表示をし相手が承諾したときに成立する。 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。 |
|
契約の申込みを受けた者の物品保管義務 | 商法510条 | - |
原則として申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。 | 保管義務はない。 | |
複数人が債務を負担した場合 | 商法511条1項 | 民法427条 |
連帯債務になる。 | 特約がない限り、分割債務になる。 | |
保証人になった場合 | 商法511条2項 | 民法454条 |
債務が商行為である場合等、連帯保証になる。 | 特約がなければ単純保証となる。 | |
委任の報酬請求権 | 商法512条 | 民法648条、民法656条 |
受任者が商人で営業の範囲内の行為であれば、相当な報酬を請求できる。 | 特約がなければ、受任者は報酬を請求できない。 | |
金銭消費貸借の利息請求権 | 商法513条 | 民法589条1項 |
商人間の契約では、特約がなくても法定利息を請求できる。 | 特約がなければ無利息。 | |
法定利率 | 商法1条2項 | 民法404条 |
民法の年3分を適用 | 年3分 | |
流質契約 | 商法515条 | 民法349条 |
締結可能である。 | 禁止されている。 | |
弁済の場所 | 商法516条 | 民法484条 |
特約がなければ特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は、債権者の現在の営業所又は住所において、指図債権及び無記名債権の弁済は、債務者の現在の営業所又は住所においてする。 | 特約がなければ特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所においてする。 | |
留置権 | 商法521条 | 民法295条1項 |
商人間であり、被担保債権と留置物(債務者所有物に限る)に一般的・抽象的牽連性があれば留置できる。 | 債務者所有物かは問わないが、被担保債権と留置物に直接的・個別的牽連性が必要。 | |
債権の消滅時効 | 商法1条2項 | 民法166条 |
原則として5年又は10年 | 原則として5年又は10年 | |
売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないとき | ||
商法524条1項 | 民法494条 | |
商人間の売買では、売主はその物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。 | 債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。 | |
買主が目的物の受領を拒んでる場合で、その目的物が損傷等のおそれがあるとき | ||
商法524条2項、3項 | 民法497条 | |
催告をしないで競売に付することができる。 競売に付した場合、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。 |
弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。 | |
売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したとき | ||
商法525条 | 民法542条1項4号 | |
商人間の売買においては、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなされる。 | 相手方は、催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。 | |
買主による目的物の検査及び通知義務 | 商法526条 | 民法562~民法564条 |
商人間の売買では、買主が検査及び通知を怠った場合、売主に担保責任を追及できない。 | 買主による通知義務はないが、契約内容に適合しない場合、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求及び契約解除ができる。 | |
買主による目的物の保管及び供託 | 商法527条、商法528条 | 民法545条 |
売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを理由に、契約の解除をしたとき、数量超過・商品間違いなどにおいて、それらの目的物の保管及び供託義務がある。 | 原状回復義務は負うが、保管及び供託の義務は負わない。 |
商法 | 民法 |
---|---|
代理の顕名 | |
商法504条 | 民法99条、民法100条 |
原則として不要(非顕名主義) | 原則として必要(顕名主義) |
委任の範囲 | |
商法505条 | 民法644条 |
商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。 ※民法644条の趣旨を明確にした注意的規定 |
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。 |
代理権の消滅 | |
商法506条 | 民法111条、民法653条 |
本人の死亡によっては、消滅しない。 | 本人の死亡によって、消滅する。 |
隔地者間の承諾の期間を定めない契約の申込み | |
商法508条 | 民法525条 |
受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。 | 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。(民法では隔地者間という概念で限定していない) |
契約の申込みを受けた者の諾否通知義務 | |
商法509条 | 民法522条、民法527条 |
遅延なく諾否通知を発しなければならず、怠ったときは、その商人は、契約の申込みを承諾したものとみなす。 |
契約は、契約内容を示して締結の意思表示をし相手が承諾したときに成立する。 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。 |
契約の申込みを受けた者の物品保管義務 | |
商法510条 | 保管義務はない。 |
原則として申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。 | |
複数人が債務を負担した場合 | |
商法511条1項 | 民法427条 |
連帯債務になる。 | 特約がない限り、分割債務になる。 |
保証人になった場合 | |
商法511条2項 | 民法454条 |
債務が商行為である場合等、連帯保証になる。 | 特約がなければ単純保証となる。 |
委任の報酬請求権 | |
商法512条 | 民法648条、民法656条 |
受任者が商人で営業の範囲内の行為であれば、相当な報酬を請求できる。 | 特約がなければ、受任者は報酬を請求できない。 |
金銭消費貸借の利息請求権 | |
商法513条 | 民法589条1項 |
商人間の契約では、特約がなくても法定利息を請求できる。 | 特約がなければ無利息。 |
法定利率 | |
商法1条2項 | 民法404条 |
民法の年3分を適用 | 年3分 |
流質契約 | |
商法515条 | 民法349条 |
締結可能である。 | 禁止されている。 |
弁済の場所 | |
商法516条 | 民法484条 |
特約がなければ特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は、債権者の現在の営業所又は住所において、指図債権及び無記名債権の弁済は、債務者の現在の営業所又は住所においてする。 | 特約がなければ特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所においてする。 |
留置権 | |
商法521条 | 民法295条1項 |
商人間であり、被担保債権と留置物(債務者所有物に限る)に一般的・抽象的牽連性があれば留置できる。 | 債務者所有物かは問わないが、被担保債権と留置物に直接的・個別的牽連性が必要。 |
債権の消滅時効 | |
商法1条2項 | 民法166条 |
原則として5年又は10年 | 原則として5年又は10年 |
売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないとき | |
商法524条1項 | 民法494条 |
商人間の売買では、売主はその物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。 | 債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。 |
買主が目的物の受領を拒んでる場合で、その目的物が損傷等のおそれがあるとき | |
商法524条2項、3項 | 民法497条 |
催告をしないで競売に付することができる。 競売に付した場合、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。 |
弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。 |
売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したとき | |
商法525条 | 民法542条1項4号 |
商人間の売買においては、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなされる。 | 相手方は、催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。 |
買主による目的物の検査及び通知義務 | |
商法526条 | 民法562~民法564条 |
商人間の売買では、買主が検査及び通知を怠った場合、売主に担保責任を追及できない。 | 買主による通知義務はないが、契約内容に適合しない場合、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求及び契約解除ができる。 |
買主による目的物の保管及び供託 | |
商法527条、商法528条 | 民法545条 |
売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを理由に、契約の解除をしたとき、数量超過・商品間違いなどにおいて、それらの目的物の保管及び供託義務がある。 | 原状回復義務は負うが、保管及び供託の義務は負わない。 |