これまで最高裁大法廷は、地方議会議員の出席停止処分については、司法権の限界の一つである部分社会の法理により、司法判断の対象とはならないとしていましたが(地方議会議員出席停止事件:最大判昭和35年10月19日)、それが60年ぶりに変更され「普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるというべきである」(最大判令和2年11月25日)と判決を出しました。

【ポイント】

●出席停止の懲罰を科された議員がその取消しを求める訴えは、法令の規定に基づく処分の取消しを求めるものであって、その性質上、法令の適用によって終局的に解決し得るものというべきであるとし、法律上の争訟になると判断した。

●議会の運営に関する事項については、議事機関としての自主的かつ円滑な運営を確保すべく、その性質上、議会の自律的な権能が尊重されるべきであるところ、議員に対する懲罰は、会議体としての議会内の秩序を保持し、もってその運営を円滑にすることを目的として科されるものであり、その権能は自律的な権能の一内容を構成する。

●議員は、憲法上の住民自治の原則を具現化するため、議会が行う各事項等について、議事に参与し、議決に加わるなどして、住民の代表としてその意思を当該普通地方公共団体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負う。

●出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない。

●出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるものの、裁判所は、常にその適否を判断することができるというべきである。

したがって、普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるというべきである。


近年、行政書士試験において、直近の判例からも出題されていることから令和3年度の行政書士試験合格を目指している受験生は要チェックです。

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